マヨナカにこんにちは! つくよみです。
作家にとって永遠の悩みの1つですよね。
面白いラノベとはなにか?
これも、解答は複数あって、正解はこれだ! と、一概に言えるものはありません。
今回は「ひげひろ」こと「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」を参考書にします。
ひげひろ、流行ってますよね。シリーズ累計150万部突破したようで、大人気です。
流行っているものには、人が「面白い」と思うものの解答が潜んでいます。
ひげひろから、面白いライトノベルの書き方の正解の1つを見ていきたいと思います。
本記事では、キャラクター設定や文章の引用はありますが、物語の重要な要素のネタバレはありませんので、安心してお読みください。
この記事の結論は、これです。
ひげひろの概要
ひげひろは、「女子高生を拾う」のタイトルから察しはつくかもしれませんが、サラリーマンの主人公が女子高生を拾うところから始まります。
そして、そんな二人を中心に書かれるラブコメライトノベルです。
5年片想いした相手にバッサリ振られたサラリーマンの吉田。ヤケ酒の帰り道、路上に蹲る女子高生を見つけて――「ヤらせてあげるから泊めて」「そういうことを冗談でも言うんじゃねえ」「じゃあ、タダで泊めて」なし崩し的に始まった、少女・沙優との同居生活。
引用:裏表紙の作品紹介
裏表紙の作品紹介ページから割と衝撃的です!
登場人物
サラリーマンで、5年間片思いをした年上の女性に振られる。曲がったことが嫌いで、とにかく真っすぐな性格の持ち主。言い寄られても好意に気づかない鈍感力を持ち合わせている。
北海道の自宅から家出して、主人公の住む東京まで放浪生活をしてきた女子高生。吉田と出会う前は、家に泊めてもらう代わりに、男に体を許して仮の宿を得るということを繰り返してきた。
裏表紙の「ヤらせてあげるから泊めて」の言葉からわかるように、沙優は壮絶な経緯をたどって吉田の元にやってきています。
この壮絶な過去も、ポイントの1つですので、後から解説します。
人が物語を面白いと思う条件
まず、前提として人が物語を面白いと思うのはどんな時でしょう?
その通りです。
ただ、面白いと思う理由の1つに、「欲が満たされる」があります。
人は誰しも欲を持っていて、それを満たす物語を求めているんです。
たとえば、わかりやすい欲を満たしてくれる要素は、タイトルにもありますね。
「女子高生を拾う」です。
女子高生を拾ってみたい――と思う男の潜在的な願望をがっちり掴んでいるんですよね。
ボクも、うん、掴まれた側の人間ですね!
欲は、人によって違います。
たとえば、女の方や現役JKに囲まれた10代の男は、「女子高生を拾ってみたい!」と思うことはないでしょう。
20代や30代男性は、どうでしょう? そういう願望を持っている人もいそうじゃないですか?
ここでポイントになるのは、「女子高生を拾う」という要素は、20代、30代男性をターゲットにしているということです。
たとえば、典型的な要素として、「勧善懲悪」や「ハーレム」があります。
勧善懲悪は、悪いやつは懲らしめられるべきだ! という多くの人が持つ欲なので、ターゲット層はかなり幅広いです。だから、ヒットした時の爆発力は計り知れませんね。
ハーレムは、野郎の願望をダイレクトに刺激する要素ですねぇ。この場合は、ターゲットが男性ということになります。勧善懲悪よりは、ターゲットは狭まりますが、欲はダイレクトに揺さぶられます。
どんな欲を満たす物語を書くのか? これを意識するだけでも書きやすさと面白いと言われる物語を書ける可能性がグンとあがります。
ひげひろの欲を満たす要素とターゲット
ここでは、ひげひろの欲を満たす要素を上げてターゲットを考察してみようと思います。
物語は様々な要素が絡み合っていますが、今回ひげひろの重要要素を3つ挙げるとすれば、以下のようになります。
2.職場の先輩、後輩、沙優を含めた女性関係
3.不安定な沙優に対する庇護欲
1.職場から帰ったら女子高生が待っている生活
社会人の独身男性は、帰ったら奥さんが待っている既婚者の生活を羨ましいと思う方が多いです。
消えた電気、電子レンジでチンするだけの簡単なご飯。これが、寂しいと思う方は多いのではないでしょうか?
ひげひろの作中では、吉田さんが家に帰ったら、沙優が料理や掃除をして待ってくれています。
家で待ってくれている人がいて欲しい。それに、女子高生というバリューまで付けて、叶えてくれるのがこの要素ですね。
この要素のターゲットは、社会人の独身男性なので、20~30才の独身男性でしょう。
2.職場の先輩、後輩、沙優を含めた女性関係
主人公の吉田さんは、本人は気づかないけれどモテています。ハーレム要素の一言で片付けるのは、あまり好きではないのですが、男性ならばモテて悪い気はしませんよね。
職場の先輩や後輩に好かれたい! 他の女の子といるところを見られて嫉妬されたい等々、男なら誰しも持つ欲望です。
この要素は、男性をターゲットにしていますね。
3.不安定な沙優に対する庇護欲
沙優は壮絶な経緯をたどって、吉田さんの元にやってきました。
精神的に、不安定な面を彼女は持っています。普段はそんなことをおくびにも出さないのですが、時々負の側面を見せます。
そんな彼女を守ってやりたい! という庇護欲の要素ですね。
これはターゲットが幅広くて、庇護欲の強い人とでも定義しておきましょう。
物語を読んでみればわかるのですが、内容や構成も20~30歳の独身男性にぶっ刺さるような内容になっています。
自分が押したい要素が決まって、ターゲットがわかれば、物語の方向性も自ずと決まってきます!
ひげひろの強烈なオリジナリティ
ここからは、ターゲットを狙う重要性+αのお話になります。
読者の心を深くえぐるには、何かしらの尖った要素が必要になります。
ひげひろで抽出した要素は、女子高生との生活、女性関係、庇護欲を掻き立てる沙優でしたね。
どこが他のライトノベルと差別化されているか? と言えば、沙優が持つ強力な個性ですね。
他の男に体を許しながら旅をして、主人公の元にたどり着いたヒロインなんて、ライトノベルではいませんよね。
壮絶な過去があるからこそ、沙優の不安定な精神状態に説得力が増し、結果として庇護欲を掻き立てられるわけです。
正直、ライトノベルで沙優のような設定を入れるのは作り手側からしてもリスキーではあります。
この設定に、拒絶感を覚える読み手の方は、Amazonのレビューを見ていてもけっこういます。
ただ、この設定なくしてひげひろは成り立ちません。これがなければ、ボクも、記事を書こうと思えるくらい面白いとは感じなかったです。
尖った要素があるから、心を抉るんですね。
そして、リスクを取ったからこそ、150万部という大ヒットを生み出せたのです。
なので、ターゲットが想定するだけでなく、心を抉るように突き刺さる要素も加えられるといいですね!
これが、とっても難しいんですが……。
まとめ
ひげひろは、「刺さるターゲットを想定して書く」を考える際の1つの参考書になります。
ふむむ、この物語はこんな人をターゲットにしてて、なるほどなるほど、たしかに刺さりそうだ!
こんな作者視点を持って、本を読めると成長に繋がると思います。
みなさまの創作活動がよりよくなりますように。
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