こんなお悩みを持つ作家さんは多いと思います。
僕も小説を書くときに「これ、キャラクターの感情の動きが読者に伝わるのかな? 読者さんの感情は動かせるのかな?」ともんもんとすることが多々あります。
そんなときに僕が見つけたのは、書籍『感情を引き出す小説の技巧』でした。
これの紹介ラベルに書かれた
「彼は悲しんだ」と書いても読者は悲しまない
というキャッチフレーズに引かれてついつい手に取ってしまったんですよね。
ですが、結論それは正解でした。
「勉強になった」と素直に思えましたので、今回は書籍『感情を引き出す小説の技巧』を紹介させていただきます!
書籍『感情を引き出す小説の技巧』の概要
『感情を引き出す小説の技巧』は元々海外の書籍であり、著者はドナルド・マースさんですね。
文芸エージェントという肩書を持ち、『職業としての小説家』や『ベストセラー小説を描くためのワークブック』などなど小説に関するノウハウ系の書籍を多く書いている方ですね。
日本語訳されている書籍こそ少ないですが、アメリカでの出版書籍の数を見る限り、かなりやり手の方です。
『感情を引き出す小説の技巧』で参考になったトピックをご紹介:キャラクターの感情を内側から書くか、外側から書くか
ではでは、『感情を引き出す小説の技巧』読んでみて「なるほどなぁ」となったトピックを紹介させていただきます。
『感情を引き出す小説の技巧』の第2章のトピックである「キャラクターの感情を内側から書くか、外側から書くか」についての解説です。
当書籍では登場人物を通じて読者の感情を動かす方法は、以下の3つがあると解説されています。
登場人物が感じていることを伝える
・外側から書く
登場人物の行動によってその人物の心の内を読者に想像させる
・キャラクターたちですら持っていない感情を読者の内から引き出す
読者の価値観がストーリーを読んだときに起こる反応
そうですね。3つ目は心理学的な内容がけっこう含まれているので、今回はわかりやすい『内側・外側から書く』の2点にフォーカスを当てたいと思います。
内側からキャラクターを書く
そうですね。ほかの媒体よりもキャラクターの心情の動きを書きやすい小説において一番馴染みのある感情表現とも言えます。
怠い。眠い。仕事行きたくない。帰りたい。あ、ここ家か。
引用:あの夏が飽和する。
ダイレクトな表現であれば、キャラクターの心の内を書き出すだけでも、内側から書くにあたりますね。
それだけで終わるなら解説はいりません。
大事なのは登場人物が感じていることをページに書いていくだけでは、読者はなにも感じない――ということですね。
「彼は全身で総毛立った」と書いて読者は恐怖を覚えるのか?
「彼女の目は憎しみの矢を放った」と書いて読者はキャラクターに共感して怒るのか?
これは否なんですよね。
でも、ついつい安易な表現で済ましてしまうことが多い僕は「うっ」となりましたね。「うっ」と。
読者の感情を揺さぶるためには、感情をただ書くだけでなく、そこに意外性と波が必要なんですよね。
人間の感情は複雑怪奇で、矛盾があったり、隠された本当の感情があったり、一瞬で喜怒哀楽が切り替わったりします。
たとえば、誕生日にキャラクターがケーキに立ったろうそくを息で吹き消そうとしています。
そこで、キャラクターはどんな感情を抱いていると想像できるでしょうか?
大体はそう予想しますよね。そこで、キャラクターの心情の描写としてこう書いてあったらどうでしょうか。
このろうそくを吹き消したら、あたしの命の灯が一緒に消えてしまいそうな気がした。
この例は意外性にフォーカスしていますが、読者にとって意図しない感情は興味を惹きつけ、感情を動かしていくんですよね。
外側からキャラクターを書く
そうですね!
『誰も救ってくれない。誰も私の声を聞いてない。誰も、誰も私のことなんか見てなかった! 嫌い。全部嫌い! 皆死ね! 皆死んじゃえ!』
少女は片腕で少年の首を抱え、もう片方の手でナイフを持ち警官たちに向かって叫ぶ。
引用:あの夏が飽和する。
こちらの例では、痛いくらいにストレートで、痛々しい感情がセリフと行動に詰まっていますね。
そうですね。キャラクターの動きを書く上で大事なのは『サブテキスト』だとこの書籍では語られていました。
語られていない感情がサブテキストにあたります。
読者はそれに気付いたときに驚きを覚えるんですよね。
『ありがとう千尋。千尋がいてくれたから、こんなに楽しい旅ができた。だからもういい。もういいんだよ。死ぬのは私一人で。千尋。あんただけは生きて。生きて、生きて、そして死ね』
突き飛ばす直前、彼女が僕に耳元で囁いた。
引用:あの夏が飽和する。
この章の冒頭で紹介したシーンの続きですね。少女が人質の少年に向かってこれを言うんです。
「皆死ね」と言っていた少女が、少年に対してだけ「生きて、生きて、そして死ね」と少年を突き飛ばし、そしてそのあとで自分の首をナイフで切って死んじゃうんですよね。
この少女は何を想って「生きて、生きて、そして死ね」と言ったのか。
明らかに語られていない感情が、サブテキストが存在します。
実際、このサブテキストは『あの夏が飽和する。』においても、物語の主軸の一つになるくらい強烈で、多くの読者さんはそれに魅了されました。
まとめ
書籍『感情を引き出す小説の技巧』の紹介をさせていただきました。
当記事では、書籍のごくごく一部しかご紹介できてはいませんので、あとは本編を読んで確認してくださいませっ。
あ、あと感情を揺さぶる作品を勉強したい場合、『あの夏が飽和する。』はマジで参考になります。
本サイトでも作品紹介をしていますので、よろしければ合わせて読んでいってくださいませ!
僕の中で、今もあの夏が飽和してるんだ。 小説『あの夏が飽和する』はもう読みましたか? (function(b,c,f,g,a,d,e){b.MoshimoAffiliateObject=a; b[a]=b[a]||fu[…]
最後まで読んでくださりありがとうございました!